技術連携と運用
AWS MarketplaceのSaaSライセンスは別アカウントに共有できる?AWS License Managerとテナント管理の違い
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この記事の要点
AWS Marketplaceで購入した製品には、SaaSを含めてライセンスが自動で作成され、購入者ガイドの手順でAWS License Managerのコンソールから表示できます。ただし、同じ購入者ガイドは、SaaSライセンスの共有は現在サポートされないと明記しています。AWS Organizations内の他のアカウントに共有できるのは、Amazon Machine Image(AMI)、コンテナ、機械学習、データ製品などです。SaaS内でのユーザー招待は、AWSのライセンス共有ではなく、販売者のSaaSの機能です。
複数のAWSアカウントや複数の部門にSaaSを展開したい購入者は、AWS MarketplaceでSaaSを購入したあと、次のように考えるかもしれません。「AWS License Managerにライセンスが表示されるのだから、AWS Organizationsの他のアカウントにも共有できるのではないか。」SaaSを提供する開発者にとっても、購入者のアカウント設計がSaaSのテナント設計に影響するため、この点は避けて通れません。
結論から言うと、現行のAWS Marketplace購入者ガイドには、SaaS製品についてはライセンスが作成されるものの、SaaSライセンスの共有は現在サポートされないと明記されています。(Viewing your licenses)これは、SaaSアプリケーションの中でユーザーを招待する機能とは、まったく別の話です。
本記事の内容は、2026年10月28日に確認したAWSの公式ドキュメントにもとづきます。仕様は変わることがあるため、判断の前には各出典で最新の内容を確認してください。
本記事が扱うのは、AWS側のライセンスの表示と共有です。SaaS内での契約とテナントの紐付けの設計は、AWS Marketplaceの契約をSaaSテナントに紐付けるには?で扱います。
AWS Marketplaceのライセンスを確認する方法
AWS Marketplaceは、購入したAMI、コンテナ、機械学習、SaaS、データ製品について、ライセンスを自動で作成します。(Viewing your licenses)購入者ガイドは、購読すると契約(agreement)が作られ、その契約が製品を使うライセンスを与える、と説明しています。(Sharing product subscriptions in AWS Marketplace)ライセンスの管理と共有はAWS License Managerで行いますが、購入した製品のライセンスは、AWS Marketplaceの画面からも表示できます。(Viewing your licenses)
購入者ガイドが示す、ライセンスの確認手順は次のとおりです。(Viewing your licenses)
- AWS Marketplaceにサインインし、「Manage Subscriptions」を選びます。
- すべてのライセンスを見るなら、「Actions」メニューから「View Licenses」を選びます。AWS License Managerのコンソールで、AWS Marketplaceが管理するライセンスの一覧が開きます。
- 特定の購読のライセンスを見るなら、製品のカードから製品詳細ページに進み、「Actions」メニューの「View License」を選びます。AWS License Managerのコンソールで、その製品のライセンスが開きます。
確認するときの注意が二つあります。
一つは、「Manage Subscriptions」に表示されるのが、現在のAWSアカウントの購読だけという点です。AWS Organizationsの管理アカウントであっても、メンバーアカウントの購読は表示されません。(Viewing your licenses)
もう一つは、組織全体の把握です。購入者ガイドは、組織内のすべてのアカウントから集約した、付与されたライセンスを表示できるとも案内しています。(Viewing your licenses)AWS License Managerのコンソールには、組織の管理者だけが使える、付与されたライセンスを集約して表示するタブがあります。(Granted licenses in License Manager)ただし、これは付与されたライセンスの表示であり、SaaSライセンスを他のアカウントに共有する機能ではありません。
SaaSを提供する販売者の側では、SaaSの連携で受け取るLicenseArn(付与されたライセンスの識別子)が、契約で付与されるライセンスを指します。AWS License Managerのコンソールの表示と、LicenseArnとの対応関係は、確認した購入者ガイドに記載がありません。契約を承諾した日と、ライセンスが生成される日が異なる場合もあります。たとえば、将来の日付の契約では、契約IDは承諾日に作られ、ライセンスまたは権利が有効になるのは開始日です。(Future dated agreements and private offers in AWS Marketplace)この時期のずれは、AWS MarketplaceのFuture Dated Agreementsとは?で扱います。
SaaSとAMIなどで異なる、共有の扱い
ライセンスが作成されることと、他のアカウントに共有できることは、別の話です。購入者ガイドの記述を、製品の種類ごとに整理します。
| 製品の種類 | 購入でライセンスが作成されるか | AWS License Managerでの共有 |
|---|---|---|
| AMI、コンテナ、機械学習、データ製品 | 作成される | 共有できる |
| SaaS | 作成される | 現在サポートされない |
表の出典は、Viewing your licensesと、Sharing your licensesです。
共有できる製品としては、このほかにOracle Database@AWSと、サードパーティのAmazon Bedrockモデルのサブスクリプションが挙げられています。(Sharing your licenses)SaaSは、共有できる製品の一覧に含まれていません。AMIやコンテナなど、他の製品タイプの共有機能を、SaaSにそのまま当てはめることはできません。
共有できる製品では、何をするのか
参考として、共有できる製品での手順を確認します。SaaSには当てはまりませんが、AWS License Managerが何を共有する仕組みなのかを知っておくと、SaaS内の機能との違いが分かりやすくなります。
購入者ガイドによると、AMI、コンテナ、機械学習、データ製品、Oracle Database@AWSのサブスクリプションでは、事前に組織のライセンス共有を設定します。そのうえで、AWS License Managerのグラント(grant)でライセンスを共有します。(Sharing your licenses)
- 事前の設定:AWS Marketplaceに、ライセンスを自分に代わって管理する権限を与えます。あわせて、AWS License Managerを初回利用向けに設定します。(Sharing your licenses)
- 配布の操作:組織の管理アカウント、または委任管理者アカウントにサインインして配布します。(Sharing your licenses)
- 配布先:AWS License Managerの案内では、グラントの受け取り先として、特定のAWSアカウント、組織のルート、組織単位(OU)を指定できます。1ライセンスあたり、最大2,000のグラントを作成できます。(Distribute License Manager entitlements)
- 受け取る側の操作:グラントは「Pending acceptance」の状態で届き、受け取る側が受諾して有効化すると使えるようになります。(Grant acceptance and activation in License Manager)
AWS Marketplaceの購読には、製品詳細に「Access level」が表示されます。「Agreement」のライセンスは、自分で使うことも、組織内の他のアカウントに共有することもできます。「Entitlement」は、他のアカウントから共有されたライセンスで、使えますが、さらに共有することはできません。(Sharing your licenses)
二つの問いへの答え
AWS Organizations内なら、SaaSのライセンスも共有できますか?
2026年10月28日時点の購入者ガイドでは、共有できません。SaaS製品でもライセンスは作られますが、SaaSライセンスの共有は現在サポートされない、と明記されています。(Viewing your licenses)組織に参加していても、SaaSは共有の対象に入りません。共有できる製品の一覧にSaaSが含まれていないためです。(Sharing your licenses)
AWS License Managerで見えるなら、共有できるということですか?
そうではありません。AWS License Managerのコンソールに表示されることは、ライセンスが作られたことを示します。SaaSライセンスの共有が現在サポートされないことと、矛盾はしません。(Viewing your licenses)SaaSライセンスがAWS License Managerのコンソールでどのように表示されるかは、確認した購入者ガイドに個別の記載がありません。そのため、表示される内容から、共有の可否を推測しないでください。
AWSアカウント、ライセンス、SaaSの利用者の違い
誤解が起きやすいのは、似た言葉が、異なる階層の対象を指しているためです。次の表は、AWS側の対象と、SaaS側の対象を並べたものです。AWS側の列は公式ドキュメントにもとづき、SaaS側の列は、AWS Marketplaceの契約をSaaSテナントに紐付けるには?の整理にもとづきます。
| 対象 | 何を指すか | 誰が管理するか | 他に共有できるか | 共有の単位 |
|---|---|---|---|---|
| AWSアカウント | AWSのリソースと購入の単位。購入の操作をする主体 | 購入者 | 共有するものではない | なし |
| AWS Organizationsの組織 | 複数のAWSアカウントをまとめる管理の単位 | 購入者の管理アカウント | 共有先の指定に使う | 組織、組織単位(OU)、アカウント |
| AWS Marketplaceのライセンス | 契約によって付与される、製品を使う権利 | 購入者(AWS License Managerで管理) | AMIなどは共有できる。SaaSは現在サポートされない | グラント(AMIなどの場合) |
| SaaSのテナント | 自社SaaSの中での、顧客の単位 | SaaSの販売者 | AWSは関与しない。SaaSの設計による | SaaSの仕様による |
| SaaSのユーザー | SaaSの中のログインする人 | SaaSの販売者が提供する機能。操作できる人は製品による | AWSは関与しない。SaaSの仕様による | SaaSの仕様による |
表のうち、ライセンスと共有の行は、Viewing your licenses、Sharing your licenses、Distribute License Manager entitlementsにもとづきます。
AWSアカウント、ライセンス、SaaSのテナントは、それぞれ別々の対象です。一つのAWSアカウントに複数のライセンスが付くことがあり、一つのライセンスをどのテナントに結び付けるかは、SaaSの側で決めます。
SaaS内でユーザーを追加することと、何が違いますか?
AWSのライセンス共有は、購入したライセンスの利用権を、AWSアカウントに配布する仕組みです。AWS License Managerは、購入したAWS Marketplaceのライセンスについて、利用権(entitlement)を特定のAWSアカウントに配布する、と説明されています。(Granted licenses in License Manager)配布の相手はAWSアカウント、組織、組織単位で、SaaSの中の個々の利用者ではありません。
いっぽう、SaaSの中でユーザーを追加するのは、販売者のSaaSアプリケーションの機能です。購入したSaaSの利用者を、購入者の管理者が招待する、といった操作が典型です。AWS Marketplaceは、購入後に顧客がSaaSの中でアカウントを作ってWebコンソールにログインできることを、販売者に求めています。(SaaS製品のガイドライン)招待できる人数や範囲は、製品の仕様と、契約で購入した数量や機能によって決まります。
つまり、次の二つは、別々に判断します。
- AWS Organizations内の他のAWSアカウントに、SaaSのライセンスを共有できるか:現在サポートされない
- 購入した会社の他の部門の担当者を、SaaSのユーザーとして加えられるか:SaaSの仕様と契約による
後者がSaaSの機能で可能であれば、AWSのライセンス共有がなくても、他部門の担当者が使える場合があります。ただし、その可否と範囲は、AWSではなく販売者の製品が決めます。購入者は、購入の前に、販売者に確認するのが確実です。
請求の集約や、Concurrent Agreementsとも別の仕組みです
SaaSライセンスを共有できないことと、請求をまとめることも、別の話です。AWS Billing Transfer(請求転送)は、請求の管理と支払いを外部の管理アカウントに任せる仕組みで、公式のFAQとガイドに、契約名義、ライセンス、SaaSのテナントが移るという記載はありません。詳しくは、AWS Billing Transferとは?で扱います。
Concurrent Agreements(同時契約)も、ライセンスを共有する仕組みではありません。同じAWSアカウントが、同じSaaS製品に複数の契約を結べるようにする機能で、契約ごとに別のライセンスができます。詳しくは、AWS MarketplaceのConcurrent Agreementsとは?で整理しています。
| 仕組み | 解決すること | ライセンスの共有にあたるか |
|---|---|---|
| AWS License Managerのグラント | AMIなどのライセンスの利用権を、他のアカウントに配布する | 共有そのもの。SaaSは現在サポートされない |
| Billing Transfer | 請求の管理と支払いを、外部の管理アカウントに任せる | 該当しない |
| Concurrent Agreements | 同じアカウントが、同じSaaS製品に複数の契約を結ぶ | 該当しない |
| SaaS内のユーザー招待 | SaaSの中で、利用者を追加する | AWS側の共有ではない。SaaSの機能 |
複数の部門に提供する場合の契約とテナントの設計
SaaSライセンスを他のアカウントに共有できない以上、複数の部門に展開するときは、契約の結び方とSaaS内の構成で対応します。以下は、公式ドキュメントの記述をもとにした設計案であり、AWSが定める仕様ではありません。
購入者の側で選べる構成
AWSの発表は、Concurrent Agreementsの利点として、異なる事業部門が、それぞれ交渉した条件と価格で独立して調達できることを挙げています。(AWSの発表)SaaS製品がこの機能に対応していれば、一つのAWSアカウントの中でも、部門ごとに別の契約を結べます。SaaSで複数のアカウントや部門を使うときの構成は、たとえば次の3通りが考えられます。
| 構成 | 内容 | 向く場面 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 部門ごとのAWSアカウントで購入する | 各部門のアカウントが、それぞれ契約を結ぶ。ライセンスも契約ごとに作られる | 部門ごとに予算と契約条件を分けたい | 部門ごとの契約の数量と期間。SaaS側でテナントを分けるか |
| 一つのAWSアカウントで部門ごとに契約する | Concurrent Agreementsに対応した製品で、同じアカウントが部門ごとに別の契約を結ぶ | アカウントは一つにまとめたまま、部門ごとに条件を変えたい | 製品がConcurrent Agreementsに対応しているか |
| 一つの契約で購入し、SaaS内で他部門を招待する | 契約は一つで、SaaSの機能で他部門の担当者をユーザーに加える | 全社で同じ条件を使いたい | 招待できる人数、機能、数量の上限は、製品の仕様と契約による |
AWSのライセンス共有に頼る構成は、SaaSでは選べません。
販売者の側で決めること
SaaSを提供する販売者は、購入者のアカウント構成によって、次の点を決めておきます。
- 同じ会社の別のAWSアカウントからの購入を、既存のテナントに結び付けるか、別のテナントにするか
- 同じAWSアカウントの追加の契約を、同じテナントに加えるか、別のテナントを作るか
- 契約の購入者ではない担当者を、ユーザーとして招待できる範囲
これらは、AWSが決めるものではなく、自社のSaaSの設計として決めるものです。契約とテナントを結び付ける設計の詳細は、AWS Marketplaceの契約をSaaSテナントに紐付けるには?で整理しています。AWS側のライセンスは、AWSアカウントではなく契約ごとに作られるため、アカウントIDだけで同じ会社の契約を束ねる設計は避けます。購入した人が、どのテナントに契約を付けるかを選べる流れにしておくと、部門ごとの購入と全社での購入の、どちらにも対応できます。
また、購入者が「AWS Organizationsで共有できるはずだ」と考えて問い合わせてくる場合に備えて、製品ページや案内に、SaaSのライセンス共有は現在サポートされないことと、SaaS内でユーザーを追加する方法を記載しておくと、行き違いを減らせます。
次に取る行動
購入者は、次の順で確認してください。
- 購入するSaaSのユーザーを、SaaS内で追加できるかを、販売者に確認します。招待できる人数と範囲も確かめます。
- 部門ごとに別の契約が必要なら、SaaS製品がConcurrent Agreementsに対応しているかを確認します。
- 請求をまとめたいときは、AWS Organizationsの構成やBilling Transferとは別の検討であることを、社内の関係者に共有します。
- AMIなどの共有可能な製品を購入する場合は、AWS License Managerの共有の事前設定が必要です。SaaSには当てはまりません。
販売者は、次を確認してください。
- 製品ページや案内に、SaaSのライセンス共有が現在サポートされないことと、SaaS内のユーザーの追加方法を載せる
- 同じ会社の複数のAWSアカウントと、同じアカウントの複数の契約を、どのテナントに付けるかの方針を決める
- 契約とテナントの対応を保持するデータを、AWSアカウントIDではなく、LicenseArnを軸に設計する
Deshimaで扱える範囲
ライセンスと利用企業を正しく紐付けるには、購入者と契約の情報を取得し、自社SaaSのテナントやユーザーに結び付ける処理が要ります。その設計は、AWS Marketplaceの契約をSaaSテナントに紐付けるには?で整理しています。この処理を自社で一から作らずに済ませたい場合は、AWS Marketplaceへの掲載を支援するDeshimaの利用申請フォームと、契約情報の同期が選択肢になります。
Deshimaは、購入者と契約の情報の取得と同期、利用申請フォーム、Amazon EventBridgeへのイベント発行を担います。自社SaaSでは、そのイベントを既存のユーザーやテナントに結び付け、契約に応じた機能、数量、利用可否を反映する処理を実装します。具体的な分担は、導入する構成に応じてご確認ください。
AWS License Managerでのライセンスの共有や配布の設定は、購入者の側の作業であり、Deshimaの機能としては案内していません。複数の部門や複数のAWSアカウントからの購入を、利用申請フォームでどこまで扱えるかについては、導入前に個別にご相談ください。
Deshimaの利用料は、初期費用と月額費用がどちらも0円で、費用が発生するのは製品が売れたときの販売手数料のみです。料率は個別にご提案しています。AWS Marketplaceの販売手数料、自社側の実装と運用の工数、必要なAWSリソースの費用は別にかかります。
2026年10月28日時点の対応範囲は、SaaS Contract(SaaS契約。契約期間と購入する権利をあらかじめ定め、前払いまたは支払スケジュールで請求する料金モデル)型のみです。従量課金(メータリング)とChannel Partner Private Offer(CPPO)は対象外で、Concurrent Agreementsには対応済みです。対応範囲はトップページのFAQに、料金の考え方は料金のセクションに記載しています。
Deshimaは更新が多いため、最新の機能と対応範囲は、無料のアカウントを作成したうえで、プロダクト内のドキュメントでご確認ください。