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AWS Marketplaceの解約、返金対応|販売者の手続きとSaaSの権限制御

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この記事の要点

AWS Marketplaceの契約終了には、契約の取消、返金(請求調整)、権利の終了、従量課金の最終使用量報告という別々の処理が関わります。販売者はAWS Partner CentralのAgreementsページかAPIで取消と返金を申請でき、取消には購入者の承認が必要で、返金(請求調整)には購入者の承認は必要ありません。同じアカウントが複数の契約を同時に保有できるConcurrent Agreementsの製品では、Amazon EventBridgeのイベントを受けて、そのテナントに紐付いたライセンスだけで権限を見直す設計にしておく必要があります。SaaS内の退会操作だけでは、AWS Marketplace上の契約と請求は終わりません。

「解約したい」という連絡がSaaSのサポートに届いても、管理画面でそのテナントを無効にするだけでは、AWS Marketplace上の契約は終わりません。公式ガイドは、SaaS内で解約を希望した購入者をAWS Marketplaceへ案内するよう求め、将来の請求が発生しないことを確実にするには、購入者がAWS Marketplace側でキャンセルを確認する必要があると説明しています。(SaaSの契約料金)

逆向きも同じです。AWS Marketplace上で契約が終わっても、SaaSのテナントは自動では止まりません。契約の終了を知らせるイベントを受けて、購入者の権利を取り消し始めるのは、販売者のSaaS側だからです。(SaaSイベント管理)解約と返金の依頼では、AWS側の処理とSaaS側の処理が別々に動きます。

本記事は、日本のSaaS販売者が、自社が販売者になっているSaaSの契約の取消と返金を申請する手順と、そのときSaaS側で権限を止める設計を整理します。内容は、2026年10月5日に確認したAWSの公式ドキュメントと発表にもとづきます。手順や画面は変わることがあるため、申請する前には各出典で最新の内容をご確認ください。

「解約」と呼ばれる処理を四つに分ける

AWS Marketplaceの契約終了に関わる処理は、起点も届く合図も別々の四つに分かれます。

処理内容申請と承認SaaS側に届く合図
契約の取消契約を終わらせ、まだ発行されていない将来の請求書を止める販売者がAWS Partner CentralのAgreementsページかAPIで申請し、購入者が承認する取消申請の状態と、契約の終了を伝えるイベント
返金(請求調整)発行済みの請求書の払い戻し、または未払い残高の減額販売者が申請する。購入者の承認は不要請求調整の完了か失敗を伝えるイベント
権利の終了購入者が製品を使う権利がなくなるAWS側で発生する権利の終了を伝えるイベント
最終使用量報告従量課金の未送信分を送るSaaS側が送る権利の終了のイベントから1時間の窓

(出典:返金と取消、SaaSイベント管理)

この四つは、互いの代わりになりません。契約の取消が止めるのは、まだ発行されていない将来の請求書だけで、発行済みの請求書は自動では返金されません。(返金と取消)返金は請求書を対象にした調整であり、取消は別の申請として出します。SaaSの管理画面での退会は、この四つのどれにも当たりません。

購入者が自分でできることと、販売者にしか始められないこと

依頼が届いたら、まず購入者の契約の種類を確かめます。種類によって、購入者が自分で終えられるか、販売者の申請が要るかが変わるからです。

購入者の契約取消と返金の起点販売者の作業
SaaS Subscription購入者がコンソールでいつでもキャンセルできる。すでに発生した使用量は購入者の負担になる最終使用量報告
Public Offer(パブリックオファー)の契約を、購入から48時間以内にキャンセル購入者がAWS Customer Serviceに連絡し、AWSが販売者を介さずに全額を返金する作業なし。SaaS側の権限停止だけが残る
Public Offerの契約の48時間超、およびPrivate Offer(プライベートオファー)の契約販売者が取消を申請し、購入者が承認する。返金も販売者が申請する取消と返金の申請

(出典:購入者ガイド(キャンセル)、購入者ガイド(返金))

48時間は、購入からキャンセルまでの時間で、返金を依頼するまでの時間ではありません。(購入者ガイド(返金))

返金には、AWSが販売者に代わって処理するものと、販売者の承認が要るものがあります。AWSが販売者に代わって処理する返金は、無料トライアルから有料に切り替わって7日以内の課金、メータリングの誤りによる課金、非Private Offerの購読を同額以上のものに置き換えたときの下位プラン分です。販売者の承認が要る返金は、Private Offerのすべての返金と、購読のダウングレードです。(返金と取消)そのほかの返金の条件は、販売者が定める返金ポリシーに従います。有料製品には、ソフトウェア料金の返金ポリシーを明示する義務があり、販売者は掲示した方針を守る必要があります。(返金と取消)ポリシーの書き方は、AWS MarketplaceのEULAと標準契約で扱います。

AWS Partner Centralで行う取消と返金の申請

2026年3月31日のAWSの発表は、販売者がAgreementsページかAgreement APIから、返金と契約の取消を自分で申請できるようになったと伝えています。(AWSの発表)2026年10月5日時点の販売者ガイドは、AWS Customer Serviceの関与なしにこれらを行えると説明し、サポートケースはAgreementsタブが対応しない依頼に限っています。(返金と取消)一方、同じ時点のSaaSの契約料金のページには、購入者がAWS Supportを通じて取消と返金を依頼するという旧来の説明が残っているため、社内の手順書は販売者ガイドの返金と取消のページを基準に書きます。(SaaSの契約料金)

契約の取消を申請する

申請できるのは、その契約の販売者(seller of record)です。Public Offerと、自社が直接出すPrivate Offerでは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)である自社が販売者に当たります。契約が有効であること、同じ契約に有効な取消申請がないこと、対象の契約に関連する契約が残っていないことも前提です。たとえば、年間割引の契約が付いた使用量の契約は、取消できません。(返金と取消)

手順は、Agreementsページで契約を選び、取消を依頼し、理由を選んで、必要なら購入者へのメッセージを添えて申請する流れです。申請すると購入者の応答フォームのリンクが表示されるため、直接共有すれば承認を早められます。購入者の応答期限は7日間で、承認されるか、応答がないまま7日が過ぎると、契約が取り消されます。拒否された場合は、必要に応じて新しい申請を出し、承認待ちの申請は取り下げることもできます。(返金と取消)

承認待ちの間、契約はまだ取り消されていません。そのため、取消の完了を前提にSaaS側の権限を先に止めると、契約が続いたまま購入者が使えなくなる事態が起こり得ます。

返金(請求調整)を申請する

返金も、Agreementsページで契約を選んで始めます。理由を選び、対象の請求書を選び、請求書ごとに調整額を入力し、最後に調整額の合計を入力して確定する四段階です。調整額は税抜で、請求書ごとの上限を超えられません。購入者の承認は要りませんが、処理が終わった返金は取り消せません。未払いの請求書では請求額から差し引かれ、支払い済みの請求書にはクレジットメモか現金での返金が適用されます。(返金と取消)

返金が契約の取消に依存する場合は、先に取消を申請し、承認を待ってから返金を申請します。Know Your Customer(KYC)の要件がある国で発行された請求書を調整するには、先に副ユーザーの確認と多要素認証の有効化が必要です。(返金と取消)日本の本人確認の手続きはAWS Marketplaceの本人確認で整理しています。返金額が上限を超えるなど、申請の直後に失敗する場合は、申請自体が作られず、通知も届きません。(返金と取消)

APIと販売代理店経由の場合

申請の件数が多い場合は、https://agreement-marketplace.us-east-1.amazonaws.com のAPIを使えます。取消はSendAgreementCancellationRequestで申請し、CancelAgreementCancellationRequestで取り下げます。返金は、ListAgreementInvoiceLineItemsで対象の請求書を調べ、BatchCreateBillingAdjustmentRequestで、1回のリクエストで請求書を最大5件まで指定して申請します。(返金と取消)

Channel Partner Private Offer(CPPO)では、販売者はチャネルパートナーで、取消と返金を始められるのもチャネルパートナーだけです。ISVには通知が届きますが、返金額と購入者へのメッセージは、チャネルパートナーの利益率を守るために含まれません。(返金と取消)CPPOの取引全体は、AWS MarketplaceのCPPOとは?で扱います。

SaaS側に届く合図と、権限を止める単位

取消申請の状態が変わるたびと、返金が完了か失敗したときに、販売者のAWSアカウントのデフォルトのイベントバスに、Amazon EventBridgeのイベントが届きます。(返金と取消)契約の終了と権利の終了も、それぞれ別のイベントで届きます。(SaaSイベント管理)

ただし、イベントを受けてGetEntitlementsを呼ぶ手順が使えるのは、SaaS Contractと、SaaS Contract with Consumption(従量制料金によるSaaS契約。契約の料金に加えて超過分を従量で請求する料金モデル)の製品です。SaaS Subscriptionの製品は、権利のAmazon SNSトピックもGetEntitlementsも使いません。(SaaS Subscriptionの連携)購読の通知(連携ガイドではsubscribe-success、unsubscribe-pending、unsubscribe-success、subscribe-fail)で購読の状態を保存し、その状態で提供と停止を決めます。unsubscribe-pendingは最後の使用量を送る合図で、unsubscribe-successのあとは使用量の記録が受け付けられません。(SaaS Subscriptionの連携)このガイドは、2026年7月15日より後に販売者アカウントを登録した場合はAmazon EventBridgeでイベントを受け取り、同日以前に登録した場合はAmazon SNSを引き続き使えると記載しています。(SaaS Subscriptionの連携)ただし、上の購読の通知に対応するAmazon EventBridgeのイベント名は、このガイドに書かれていません。そのため、どの通知がどのイベントとして届くかは、自社のテストで確かめます。一方、License Deprovisionedが1時間の最終報告の窓を始めるという説明は、使用量にもとづく課金を含む製品を対象にしています。(SaaSイベント管理)SaaS Subscriptionは使用量で請求するため、最終使用量の送信は、unsubscribe-pendingを受けた時点で済ませるほか、License Deprovisionedが届く場合にも1時間の窓に収まるように設計します。SaaS SubscriptionにこのイベントがAmazon EventBridgeで届くかを直接書いた記載は確認できていないため、届き方は自社のテストで確かめます。

イベント契機SaaS側の対応
Purchase Agreement Ended契約が期限切れ、取消、終了のいずれかになった契約の終了を記録し、その契約IDに対応づいた権利を見直す。更新による終了は、更新後の契約が持つpreviousAgreementIdで見分け、更新待ちとして扱う。最終使用量の窓の起点にはしない
License Updated購入者の権利が付与または変更された契約IDとLicenseArnの対応を保存する。SaaS ContractとSaaS Contract with Consumptionでは、GetEntitlementsで権利を確認し、提供内容を変える
License Deprovisioned購入者の権利が終了した従量課金を含む製品では、未送信の使用量を1時間以内に送る(最終使用量報告の窓が始まる)
Purchase Agreement Advisory IssuedAWSが契約を無効にし得る勧告を出した(購入者アカウントの閉鎖、侵害、悪用、不正などが契機になり得る)購入者に直接連絡し、アクセスを見直すか判断する
Agreement Cancellation Requestの各イベント取消申請が、承認待ち、承認、拒否、取り下げ、検証失敗のいずれかになった申請の状態を記録する
Purchase Agreement Billing Adjustment Completed、Failed返金が完了か失敗した請求の記録を更新する

(出典:SaaSイベント管理、Amazon EventBridgeイベント一覧)

Amazon EventBridgeを含む、AWS MarketplaceとSaaSの連携機能の全体像は、AWS MarketplaceのSaaS連携に必要な実装で整理しています。

販売者が製造元と提案者を兼ねる直接販売では、契約の作成、変更、終了のイベントは、提案者(Proposer)向けのものだけが届きます。製造元(Manufacturer)向けのイベントだけを購読するルールでは、自社が製品を直接販売した契約の終了を知らせるイベントを受信できません。License UpdatedとLicense Deprovisionedは、製造元向けのイベントだけです。(SaaSイベント管理)

取消申請の承認から、権利の終了のイベントが届くまでに、どれだけの時間がかかるのか。AWSの公式ドキュメント(2026年10月5日時点)には、この間隔の記載がありません。

権限を止める単位を決める

2026年6月1日以降に作成される新規のSaaS製品では、同じAWSアカウントが同じ製品に複数の契約を同時に保有できるConcurrent Agreementsが、自動的に有効になります。(移行ガイド)複数の契約が並ぶ状況で、一つが終わったからとテナントを丸ごと止めると、有効な契約が残っている購入者まで利用できない状態にしかねません。権利を識別するのはLicenseArnで、GetEntitlementsはLICENSE_ARNで絞り込めます。(移行ガイド、GetEntitlements)一方、契約を識別するのは契約ID(Agreement ID)で、LicenseArnとは別のIDです。(移行ガイド)そのため、契約が一つ終わったときは、終了した契約の記録を閉じてから、そのテナントに紐付いたLicenseArnだけでテナントの権限を再計算する流れにします。同じAWSアカウントが別の部門や別のテナントのために買ったライセンスも、GetEntitlementsをアカウントIDで絞ると同じ応答に返ります。AWSアカウントの一致は、権利がどのテナントのものかを決める根拠にはしません。

ところが、Purchase Agreement Endedのイベントは、契約IDを含みますが、LicenseArnは含みません。License UpdatedとLicense Deprovisionedのイベントは契約IDとLicenseArnの両方を含むため、License Updatedを受け取るたびに、契約IDとLicenseArnの対応を保存しておきます。License Updatedは、ライセンスの付与時と変更時に届くため、対応の保存はライセンスが付与された時点から始まります。(Amazon EventBridgeイベント一覧)

更新後のライセンスが前のLicenseArnを引き継ぐかどうかは、2026年10月5日時点の移行ガイドに記載がありません。(移行ガイド)そこで、この対応は最後に受け取った契約IDで置き換え、Purchase Agreement Endedを受けたときに終了として記録するのは、終了した契約IDにいま対応づいているLicenseArnだけにします。終了直後は、終了した契約の権利がまだGetEntitlementsの応答に残っている可能性があるため、応答に返るかどうかだけでは終了を判断しません。一方、更新後の契約IDに置き換わったLicenseArnや、更新後の契約が持つ別のLicenseArnは、旧契約の終了では終了になりません。

自動更新では新しい契約が作られ、そのPurchase Agreement Created(intentがRENEW)のイベントが、更新前の契約IDをpreviousAgreementIdに持ちます。(Amazon EventBridgeイベント一覧)この関係を保存しておけば、旧契約のPurchase Agreement Endedが届いたときに、更新による終了と見分けて、更新後の権利を止めずに済みます。ただし、previousAgreementIdを含む例が公式に載っているのは提案者(Proposer)向けのイベントで、製造元(Manufacturer)向けのイベントに同じ項目が届くかは、例からは確認できません。旧契約のPurchase Agreement Endedが更新後の契約のイベントより先に届いた場合は、この判定が間に合わず、更新後の契約のPurchase Agreement CreatedかLicense Updatedを受けるまで、テナントが一時的に停止状態になり得ます。

次の手順は、GetEntitlementsを使う製品に対する本記事の提案です。SaaS Subscriptionの製品では、権限の再計算にGetEntitlementsを使わず、先に述べた購読の状態でテナントを動かします。ただし、License Deprovisionedを受けたときの最終使用量の送信(License Deprovisionedの手順3)は、使用量にもとづく課金を含む製品の手順であり、SaaS Subscriptionにも当てはまります。同じアカウントが複数の購読を持つ場合に、通知からどの購読かを区別できるかは、確認が必要です。

権限の再計算(テナントごと)
  1. テナントに紐付いたLicenseArnのうち、終了として記録していないもの(更新待ちを含む)の集合を作る
  2. その集合だけを、GetEntitlementsのLICENSE_ARNで絞って取得する(同じAWSアカウントの他のライセンスは評価しない)
  3. 応答の製品(ProductCode)と期限(ExpirationDate)を確認し、有効な権利だけで機能と数量を決める
  4. 有効な権利がなければ、テナントを停止状態にする

License Updated を受信
  1. license.arn と agreement.id の対応を、最新の契約IDで置き換える
  2. 更新待ちか終了として記録したLicenseArnが、更新後の契約IDと対応づくときは、その記録を取り消す
  3. 該当テナントの権限を再計算する

Purchase Agreement Created を受信(intent が RENEW のとき)
  1. agreement.previousAgreementId と新しい契約IDの関係を保存する
  2. 更新前の契約IDにいま対応づいているLicenseArnを、更新待ちとして記録する(Purchase Agreement Ended で終了として記録済みでも、更新待ちに戻す。License Deprovisioned で終了として記録したものは戻さない)
  3. 該当テナントの権限を再計算する

Purchase Agreement Ended を受信(契約状態の更新)
  1. 契約IDで契約の記録を検索し、終了として記録する
  2. 終了した契約IDが、更新前の契約IDとして保存済みなら、いま対応づいているLicenseArnを更新待ちとして記録する
  3. 保存済みでなければ、いま対応づいているLicenseArnを、終了として記録する
  4. 該当テナントの権限を再計算する

License Deprovisioned を受信(権利の終了と最終メータリング)
  1. license.arn で特定したライセンスを、終了として記録する
  2. 該当テナントの権限を再計算する
  3. 従量課金を含む製品なら、そのLicenseArnの未送信の使用量を、受信から1時間以内に送る

最終使用量の1時間は、Purchase Agreement Endedではなく、License Deprovisionedの受信から数えます。二つのイベントを別の分岐にしてあるため、到着の順序が入れ替わっても、最終使用量の送信の起点は変わりません。

契約とテナントの対応づけは、AWS Marketplaceの契約をSaaSテナントに紐付けるには?で整理しています。

GetEntitlementsの応答で権利が返らない購入者の扱いは、公式の連携ガイドが販売者の判断に任せています。(SaaS Contractの連携)契約の終了と同時に止めるか、猶予を設けるか、停止後に閲覧やデータの書き出しを許すかは、SaaS側で決めておきます。停止と削除は別の判断で、ガイドラインは、不要になった顧客データをEnd User License Agreement(EULA)の定める期間内に削除するよう販売者に求めています。(SaaS製品のガイドライン)

返金と権限の関係

返金は、請求書に対する調整です。返金の説明には、返金が購入者の権利を変えるとは書かれていません。(返金と取消)そのため、「返金したから権限を止める」という連動は、SaaS側で仮定しません。請求調整のイベントは請求の記録の更新に、権利のイベントは権限の変更に、それぞれ別々に反映します。取消申請の状態を伝えるイベントも、権限を止める根拠にはしません。前述のとおり、取消申請の承認から権利の終了のイベントが届くまでの間隔が明示されていないため、停止は、契約の終了か権利の終了を伝えるイベントに結び付けるほうが確実です。

権利がなくなった購入者を迎える

契約が終わったあとも、元の購入者はSaaSにログインを試みます。SaaS Contract(SaaS契約。契約期間と購入する権利をあらかじめ定め、前払いまたは支払スケジュールで請求する料金モデル)の公式の連携ガイドは、顧客のリクエストを三つの状態に分けて扱うよう求めています。顧客IDがない、顧客IDがあり権利も返る、顧客IDはあるが権利が返らないか足りない、の三つです。(SaaS Contractの連携)顧客IDはあるが権利が返らないか足りない場合の画面では、契約が終了していること、再購入の方法、サポートの連絡先を示します。ガイドラインは、契約の状況をSaaS内で確認できることと、返金の依頼を含む問い合わせ先を着地ページに示すことも求めています。(SaaS製品のガイドライン)

SaaS内の「退会」の導線は、購入者が次に取る行動の案内に置き換えます。SaaS Subscription(SaaSサブスクリプション。時間単位の使用量に応じて請求する従量課金の料金モデル)の購入者は、AWS Marketplaceのコンソールでキャンセルします。SaaS Contractの購入者は、購入から48時間以内のPublic OfferならAWS Customer Serviceに、それ以外は販売者に連絡し、販売者が取消を申請します。自動更新を止めたい購入者は、製品の詳細ページで「Continue」を選んで注文画面に進み、「Modify renewal」タブから「Cancel renewal」を選びます。(購入者ガイド(キャンセル))販売者が自動更新を止めた場合は、契約の変更として処理され、Purchase Agreement Amendedのイベントに現れます。(Amazon EventBridgeイベント一覧)更新条件の設計は、AWS MarketplaceのPrivate Offer自動更新で扱います。

従量課金を含む製品の最終使用量報告

従量課金の部分がある製品では、契約の終了後に使用量を送れる時間が限られます。License Deprovisionedイベントが、1時間の最終報告の窓の開始を示し、販売者はその間に未送信の使用量をBatchMeterUsageで報告します。窓が閉じたあとは、購入者の権利が完全に失効し、報告は受け付けられません。(SaaSイベント管理)

BatchMeterUsageには、平時から、24時間以上前の使用量を受け付けないという制約があります。(BatchMeterUsage)契約終了後の1時間は、それよりさらに短い窓です。1時間ごとのバッチに最終送信を任せると、実行のタイミングによっては、窓に間に合わない恐れがあります。そこで、License Deprovisionedを受信した時点で、その購入者の未送信分を即座に送る処理を、通常のバッチとは別に用意します。送信の実装と、二重計上や送信漏れの対策は、AWS Marketplaceのメータリング実装で扱います。

依頼が届いた日の動き

営業やサポートの担当者が、次の順で確認すると、取消と返金と権限の停止が混ざりません。

  1. 依頼の種類を分ける(契約をやめたい、返金してほしい、自動更新を止めたい、のどれか、または複数)。
  2. 契約の種類と販売者を確認する。Public Offerと自社のPrivate Offerでは自社が販売者で、CPPOではチャネルパートナーが販売者です。
  3. 契約を特定する。申請の画面では、購入者のAWSアカウントID、契約ID、オファーIDを確認し、返金では対象の請求書も特定します。
  4. 取消が必要なら先に申請し、購入者の承認を待ってから、返金を申請する。
  5. SaaS側で、契約か権利の終了のイベントを受信し、テナントの状態が想定どおりに変わったかを確認する。従量課金を含む製品では、最終使用量の報告が1時間以内に送られたかも確かめる。

返金は取り消せないため、申請の前に、営業とサポートの間で、額と対象の請求書を確認します。

契約終了時の動作の確認

公式の連携ガイドは、SaaS Contract型の製品のテストに、購読の解除を扱えるかの確認を含めています。ただし、AWS Marketplace Operationsチームの確認項目として挙がっているのは、GetEntitlementsの呼び出しの成功と、新規顧客のオンボードの2点です。(SaaS Contractの連携)契約終了時の動作は、この2点には含まれていません。そのため、審査を通ったことを根拠にせず、自社で確かめておきます。審査の範囲は、AWS MarketplaceのSaaS審査で確認することで整理しています。

自社のアカウントで契約を結び、取消を申請し、承認して、イベントが届く順序と時間差を記録してみてください。そのうえで、テナントの権限がどのタイミングで変わるかを確かめます。取消の承認から権利の終了のイベントが届くまでの間隔については、手元の記録を、停止の設計の根拠にします。複数の契約が結び付いたテナントでは、一つだけを取り消し、残りの契約の権限が保たれることも確認します。同じAWSアカウントが別々のテナント用に買った二つの契約では、一方を取り消しても、もう一方のテナントの権限が保たれることを確かめます。契約を自動更新したときは、旧契約のPurchase Agreement Endedが更新後の契約のイベントより後に届く順で、更新後の権利が止まらないことを確かめます。先に届く順では、一時的な停止が起き得るため、停止の長さを記録し、許容できるかを判断します。Purchase Agreement EndedとLicense Deprovisionedが逆の順に届いても、テナントの状態と最終使用量の送信の起点が変わらないことも確かめます。

冒頭の「解約したい」に戻ると、サポートが最初に確かめるのは、そのテナントがどのAWSアカウントのどの契約に結び付いているかです。AWS側のIDで特定できれば、契約の取消、返金、権限の停止を、別々の処理として順に進められます。特定できなければ、管理画面の操作がAWS Marketplace上の契約に反映されないまま残ります。

Deshimaでの対応範囲

AWS Marketplaceへの掲載を支援するDeshimaでは、セラーアカウントを連携すると、AWS IAMロールとAmazon EventBridgeのルールを自動で作成します。購入後の利用申請フォームと、購入者情報、契約情報の同期も提供しており、回収した情報はAmazon EventBridgeにイベントとして発行されます。解約時にテナントの何を止めるかといった後続の処理は、利用企業側で実装します。本記事で扱ったAWS Partner Centralでの取消と返金の申請は、Deshimaが提供する機能には含まれないため、販売者の作業として残ります。

2026年10月5日時点では、DeshimaはSaaS Contract型のみに対応しており、従量課金(メータリング)とCPPOは対象外です。Concurrent Agreementsには対応済みです。Deshimaは更新が多いため、最新の機能と対応範囲は、無料のアカウントを作成したうえで、プロダクト内のドキュメントでご確認ください。Deshimaの利用料は、初期費用と月額費用がどちらも0円で、費用が発生するのは製品が売れたときの販売手数料のみです。料率は個別にご提案しており、AWS Marketplace自体の手数料とは別になります。契約終了時の同期をどう設計するかを整理したい段階であれば、個別にご相談ください。対応範囲はトップページのFAQに、料金の考え方は料金のセクションに記載しています。

よくある質問

SaaS内で退会の操作をすれば、AWS Marketplaceの契約も終了しますか?
SaaS内の退会操作だけでは、AWS Marketplace上の契約は終わりません。公式ガイドは、SaaS内で解約を希望した購入者をAWS Marketplaceへ案内するよう求めており、将来の請求が発生しないことを確実にするには、購入者がAWS Marketplace側でキャンセルを確認する必要があります。SaaS内の退会は、AWS Marketplace上の契約の終了とは別の操作として扱います。
契約の取消と返金は、同じ申請で行えますか?
別々の申請です。契約の取消は、まだ発行されていない将来の請求書を止める処理で、発行済みの請求書は払い戻されません。返金は、AWS Partner Centralでは請求調整と呼ばれ、請求書を選んで金額を指定して申請します。返金が取消の成立に依存する場合は、取消の承認を待ってから返金を申請します。
購入者が取消の申請に応答しない場合は、どうなりますか?
購入者には7日間の応答期限があり、期限内に応答がなければ取消は自動的に承認され、契約が取り消されます。購入者は拒否もでき、その場合は理由が販売者に届きます。拒否された場合、販売者は必要に応じて新しい申請を出せます。
従量課金を含むSaaSで、契約終了後の使用量はいつまで送れますか?
公式ガイドによると、License Deprovisionedイベントが最終報告の1時間の窓の開始を示します。販売者は、この1時間のうちに未送信の使用量をBatchMeterUsageで報告します。窓が閉じたあとは権利が完全に失効し、使用量の報告は受け付けられません。
返金は、すべて販売者が申請する必要がありますか?
すべてではありません。Public Offer(パブリックオファー)の契約を購入から48時間以内にキャンセルした購入者がAWS Customer Serviceに依頼した場合は、販売者の作業なしにAWSが全額を返金できます。無料トライアルから有料に切り替わって7日以内の課金や、メータリングの誤りによる課金も、AWSが販売者に代わって返金できます。それ以外は、販売者の返金ポリシーに従い、販売者が申請します。